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パナマ文書問題から考えるタックスヘイブン問題

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(©GoogleEarth20160415)

 

パナマ文書問題

 

パナマにある法律事務所の内部文書が流出し、その文書の中にタックスヘイブンエリアに法人を所有する著名人のリストがあったというスキャンダルですね。

すっかり熊本の地震で影をひそめてしまってますが、リストには各国の指導者の名前が散見され、アイスランド首相の退任問題を誘発するはど、世界各国でかなりのインパクトを持って取り上げられております。

 

リスト内の名前は、習近平氏、ロシアのプーチン氏、キャメロン英首相、アナン元国連事務総長などなど、そうそうたるメンバーです。

・・・ただ、冷静に見ていきますと、皆さん、ご親族がご友人のお名前が出ていたに過ぎないようでは有りますが、ただ租税回避に親族友人を使うのは王道でもありますので、推定有罪のようにスキャンダルが広がっている、と言う状況のようです。

 

国の指導者が租税回避行為をしていた、という意味のスキャンダルであり、違法行為をしているというスキャンダルでは有りません。

ではなぜ、このように大きな問題となってしまっているのでしょうか?

 

それは、「政府の本来の役割に反する行動をとっているから」であります。では政府の本来の役割、とはなんでしょうか?政府の役割は多岐に渡りますので、ここではタックスヘイブン問題に限定してその役割を考えてみます。

政府の役割、それはズバリ「所得の再配分」です。

このパナマ文書問題は、本来「所得の再配分」の担い手であるべき、国家首脳が「所得の再配分」を回避するような行動を取った事、が問題視されているわけです。

 

<そもそもタックスヘイブン問題とは?>

 まず、タックスヘイブンとは何か、という事ですが、ズバリ「税金の安い地域」です。

お金持ちの人たちは、このタックスヘイブンに会社を作り、日本で商売してお金を稼ぎながら、タックスヘイブン会社に手数料などを支払いそれを日本の会社の費用に計上することで、日本で税金を支払わず、タックスヘイブンにおいて税金を払う、というような事をします。

このタックスヘイブンは税率が非常に安い、或いは無料だったりますので、お金持ち達は結果税金を払わずに貯蓄を増やすことが出来るわけです。

これってせっかく稼いだお金が使えないのでは?と心配になるかも知れませんが、実際にはさほど困りません。

お金持ちの人たちからすれば、自分や家族、人間個人の生活費などその総資産からすれば微々たるものですので、その微々たるお金については別に税金くらい払っても良いわけですから、そもそも日本できちんと申告するわけです。

そして、その膨らんだお金を使って何をするかと言いますと、株式を購入したり、不動産を購入したりします。

その株式の配当、不動産から得られる賃料収入、又、株式や不動産を売却した際のキャピタルゲイン(売却益)は、日本からタックスヘイブンへ送金される際に、10.21%、又は20.42%という

 

非常に低い税率

 

だけ課税され、納税は完結していきます。かくしてお金持ち(キャッシュ、金融資産、不動産)を沢山持つ人にはどんどん低税率の収入が入っていくわけです。

ピケティの21世紀の資本論では労働収入の伸び率を、保有資産収入の伸び率が上回っている点が指摘されてます。詳しくは読んでおりませんので分かりませんが、もしピケティが収入を税引後で調査していたのだとすれば、格差拡大の要因の一つには、このタックスヘイブン問題が存在するのかも知れませんね。

物の本によれば英サッチャー政権の金融ビッグバンをきっかけにタックスヘイブンが暗躍し始めた、という事ですから、ピケティが指摘する格差拡大が顕著になり始めた時期(ここ1世紀)ともそんなに乖離しませんよね。

 

じゃあ、そんなに悪い制度であるタックスヘイブン問題、全く対策は取られていないのでしょうか?

一応、日本にもタックスヘイブン税制なる物があり、OECD諸国でも概ね似たような税制が敷かれております。

タックスヘイブン税制とは、タックスヘイブン(日本では、一定以下の税率のエリア、と定義されます)に法人を設立した場合で、その法人に利益が貯まったのにも関わらず、オーナーである日本人に配当がされなかった場合、配当がされたと税務署がみなして課税する、という制度です。

 

ただ、これは実務的には大変課税が困難です。私は税務調査実務、徴税実務をした事がありませんので、受け売りと想像でしかありませんが、まず、日本のお金持ちとタックスヘイブン法人株主の名寄せが非常に困難でしょう。

株主の名簿はデータ化されているわけではなく、大体は弁護士や会計士の名前になっていて公開されていません。

その把握の為には、日本における税務調査で、タックスヘイブンエリアへの支出があった場合に注視する、という方法以外は取りようが無かったりもします。

税務調査は、調査コストを追徴税額の約10%に抑えるべし、という内規がありますので、赤字法人などを経由して出資をした場合、把握は非常に困難です。(赤字法人は追徴税獲得の可能性が低い為、あまり税務調査が入りません)

従いまして、そもそもタックスヘイブン法人の株主であるかどうか、の把握が困難であるため、配当していない事実を突き止めることが難しく、あまり機能していないと言うのが現実か、と思います。

 

タックスヘイブンはなぜ所得再配分を阻害するのか>

それでは、なぜタックスヘイブン所得再配分の邪魔となるのでしょうか?感覚的には「そりゃ邪魔でしょう」となりますが、少し理屈屋の視点で考えてみます。

 

まず、所得再配分、富の再配分のやり方がどのようになされるか、ですが、ずばり「税金」です。

税金をお金持ちから取って、貧乏な人に配ってあげるわけです。

 

至極当然ですね。そして、タックスヘイブンはお金持ちが租税から逃げてしまうわけなので、所得再配分を間違いなく阻害している、ということも分かりました。(シンプルすぎてお叱りの声が聞こえそうですが、まあまあ。真理は往々にしてシンプルなものです)

 

富を再配分していく現代におけるスタンダードな方法は、

①政府がまずお金を集めて

(①-1.累進課税でお金持ちから多く税金を取り)

(①-2.又は国債を発行して)

公共事業で政府から民間企業にお金を払うと

③儲かった民間企業は従業員を多く雇い、又、給料を上げる。

④更には沢山投資をしたり、外注先を多く高く使ったりして、公共事業受注企業以外にもお金が流れ、その企業も従業員を多く雇い、又、給料を上げる。

⑤給料が上がった或いは失業から回復した人がお金を消費するので、企業の売上が上がる

⇒以降③~⑤はループ

 

という物です。

タックスヘイブンは①-1を阻害してしまう為、国民の生活向上を阻害している、という事になるわけです。

 

ここで厄介なのが、①~②の担い手が「政府である」と言う点です。政府は、国内には大変強い力を持っておりますが、当然ですが外国に対してはあまり力を及ばすことが出来ません。

グローバルに展開する企業や、個人資産をグローバルに展開している人に対して、政府が及ぼせる影響が限定的なのです。

 

<解決策は?>

政府VSグローバル、は分が悪く、対抗が難しいです。従いまして、

グローバルVSグローバル

という土俵に持ってこなくてはならないわけです。

ルールを、国の法律、では無く、国際条約で作らなければならないという事です。

 

・・・それってとても難しい事ですよね。

 

私はしばらくの間はイタチごっこが続き、所得格差解消は長い戦いになっていくのではないか、と思ってます。

国際条約でルールを作る、と言っても、英国の金融立国をこのタックスヘイブンが担っている側面は否定出来ませんので、抜け道ない合意にどのくらい協力するのか、疑問です。

又、一つでもザル制度の国があれば、他国からすればそのせいで資本の海外流出を招くわけですから、自国のルールをやや緩くせざるを得ません。

 

問題意識を持った強い国家リーダー達の何世代かに渡る努力を待つしかないわけです。

その国家リーダーが・・・租税回避をしていたのでは、社会は永遠に良くならないですよね。

 

というのがこのパナマ文書問題です。

 

みなさん、健全な納税を!